- 公務員の給料は、50人以上の企業の給料を参考に決めている
- 小中学校と高校ではそもそも給与表が違う
- 周りと比べず、支出の見直しをこつこつと
平均月収、民間企業は32万円/月、小中は41万円/月、高校は43万円/月
高校教師 | 民間企業 | 小中学校教師 | |
---|---|---|---|
平均月収 | 432,201円 | 318,300円 | 408,337円 |
総務省の地方公務員給与の実態によると、高校教師の平均月収が432,201円。(引用:総務省「令和4年4月1日地方公務員給与実態調査結果」)
民間企業の平均月収は、318,300円。(引用:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」)
小中学校教師の平均月収は408,337円。(引用:総務省「令和4年4月1日地方公務員給与実態調査結果」)
高校教師の月収は、民間企業より10万円以上高く、小中学校教師よりも2万円以上高いのです。
民間企業より給料が高いのは、賃金の調査をする企業を絞っているから
民間企業の平均年収より、高校教師の平均年収は高額。しかし、これは高校教師に限った話ではありません。県庁や市役所などの公務員の平均年収も、民間企業の平均年収より高くなります。
どうして?民間企業の給料を参考にしてるんじゃないの?
よく知っているね。でも、全ての企業を参考にしている訳ではないよ。
確かに、公務員の給料は、国家公務員法第28条に基づき、民間企業従業員の給与水準と国家公務員の給与水準を均衡させること(民間準拠)を基本としています。(参考:人事院「令和6年8月給与勧告の仕組み」)
しかし、対象となる民間企業は、50人以上の従業員が在籍する企業のみ。
なぜ50人以上の従業員が在籍する企業のみを対象とするの?
その理由について、人事院は以下のように述べています。
企業規模50人以上の多くの民間企業においては、公務と同様、課長、係長等の役職段階があることから、同種・同等の者同士による比較が可能
(引用:人事院「令和6年8月給与勧告の仕組み」)
つまり、企業規模が50人以上の会社は公務員と同じ役職を置いていることが多いから、給料の比較がしやすいということ。
以下の図のようなイメージです。
さらに、企業規模50人以上の会社に勤める人数は、無期雇用者数の6割を越える人数をカバーしているとしています。
でも、民間企業の平均月収は、企業規模を限定していないよね?
いいところに気づいたね。次で解説するよ。
民間企業の平均月収は全企業の平均値
当然ながら民間企業の平均年収は、50人以下の企業も含まれます。50人以下の企業を含む、全ての民間企業の平均月収が、318,300円です。
こちらのグラフをご覧ください。厚生労働省が令和5年に民間企業の年収を調査したグラフです。
このグラフでは、従業員が1,000人以上いる企業を「大企業」、100~999人を「中企業」、10~99人を「小企業」と定義しています。
従業員数が多くなるほど、平均年収が高くなることがわかります。
公務員の給料は、50人以上の企業の給料のみを参考に決めているので、全ての民間企業の平均月収より給料が高くなるのは当然。
さらに、企業の数に注目すると、50人以上の規模の企業の割合は全体のわずか3.3%。
50人以上の従業員がいる企業の給料を基に給与を決めると、周囲と比べて決して低い給料にはなりません。
なるほど。
公務員の給料が高くなるのは、50人以上の従業員がいる企業のみを参考にしているからなんだね。
小中学校教師より給料が高いのは、「学歴や仕事内容が異なる」から
民間企業より給料が高くなる仕組みはわかったよ。
でも、なんで小中学校の先生より給料が高いの?
確かに、教師という仕事は同じなのに給料が違うのは変だよね。
高校と小中学校で給料が異なるのは、給料表がそもそも違うからだよ。
教師の給料は給与表で決まる
教師の給料は、「給与表」によって決まります。給与表の「級」と「号」によって支払われる給料が決まります。
ちなみに、給与表は地方自治体の条例によって定めれらるため、都道府県間でも教師の年収は異なります。
高校教師の給与表は小中学校と別
小中学校教師と高校教師では、そもそも給与表が異なります。
こちらのを画像をご覧ください。令和5年に埼玉県人事委員会がおこなった「職員の給与等に関する報告(意見)及び勧告」の内容を抜粋したものです。
教育職給料表(1)は、「県立の高等学校などに勤務する職員」に、教育職給料表(2)は、「小学校及び中学校に勤務する職員」に適用することが明記されています。
実際の給与表がこちら。「左が高校」、「右が小中学校」の給与表です。
実際の給与表がこちら。「上が高校」、「下が小中学校」の給与表です。
同じ「2級13号」なのに、高校は、「238,100円」、小中学校は、「219,700円」だ!
そもそも給与表が違うので、給料が変わるのは当然ですね。
70年前に別の給与表が設定された
別の給与表を使うのはいつ決まったの?
70年前の1954年だよ。
1954年の「三本権給与制の実施」によって、高校は別の給与表を使用することになりました。
1954年というと、戦後の復興期で、「冷蔵庫・洗濯機・白黒テレビ」が「三種の神器」と呼ばれ、豊かさの象徴とされた時代です。
当時、小中学校とは違う給与表が使用されるようになった理由がこちらです。
より上級の教員になればなるほど、高度な研修を要し、職務の遂行にはより困難度が加わる
引用:「国準拠制廃止後の東京都の教員給与改革の動き :小中学校教育職員給料表と高等学校等教育職員給料表の一本化までを中心に」
「小中学校と高校では、免許制度や在職者の学歴、仕事の内容も違うから高校は給料上げとくね」ということです。
今でも免許制度や学歴、仕事の内容が異なるの?
現在では、免許制度や学歴、仕事の内容に差はないよ。
現状を反映していない制度だね。
棒給表を一本化した東京都
東京都は、1954年に決められた「三本権給与制」によって、高校教師だけ給料が高いことを問題視しました。
現在では、教員の職務に違いがない、校種間の教員の学歴差がない、教員の免許制度が同一基準、であるため、異なる給与水準を設定する合理的な理由がないとしています。(参考:東京都人事委員会「職員の給与に関する報告(意見)」)
仕事内容に大きな違いがなく、教師の学歴差もなく、免許制度も同じなので、同じ給与表を使うべきだよね、ということです。
東京都では、2009年に小中高校の教師の給与表を一本化しています。
一方で、多くの自治体では、いまだに小中学校と高校では別の給与表が使われています。
高校教師の本当の月収は21万円
確かに、高校教師の見た目の年収は、割高です。しかし、もう少し詳しく考えてみると、決して割高な年収とは言えないかもしれません。
どういうこと?高校教師は年収高いじゃん。
残業代がポイントだよ!
教員には8時間/月の残業代しか払われない
教師には「みなし残業代」しか支払われません。いわゆる「教職員調整額」です。
8時間/月の残業代として、給料の4%が毎月支給されます。仮に月40時間、残業しても支払われるのは8時間分だけです。教職員調整額の制度は、1966年に定められ、当時の平均残業時間である8時間/月を基に計算されています。
一方、2023年の高校教師の平均残業時間は、80時間/月。(引用:日本教職員組合「2023年 学校現場の働き方改革に関する意識調査」)
つまり、72時間分の残業代は支払われていません。
だからなに?
冷たい言いかた…。
どういうことか説明するよ。
労働基準法によって残業代の支払いは雇用者の義務として定められています。(参考:「労働基準法第37条」)
しかし、公立学校の教師は、給特法という法律により、残業代は支給しないことが定められているのです。
そこで、支払われるべき72時間分の残業代が、現在の高校教師の給料に含まれていると考えてみます。
月給40万円の高校教師が80時間/月、残業した場合に追加で支払われるべき残業代は、22.5万円。(詳細は以下の計算をご覧ください)
高校教師の平均月収はいくらだった?
43万円/月!
残業代が支払われていると仮定した場合、残業代を除いた給料は、約21万円になります。
○条件
・月給:40万円(高校教師の平均月収は43万円ですが、一部手当を除いたと仮定)
・所定労働時間:160時間(1日8時間、週40時間の標準労働時間制)
・割増率:25%
・残業時間:80時間/月(うち8時間分は教職員調整額で支給済み)
○計算式
・残業代=「1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間」
「基礎賃金=2,500円(40万円(月給)÷160時間(所定労働時間))」
「残業代=22.5万円(2,500円(基礎賃金)×1.25(割増率)×72時間(残業時間))」
他と比べず、「自分の手取り-2万円」で暮らす
高校教師の年収について考えてみました。
残業時間の多さを考えても、高校教師の給料は高いよ…
年収や貯金額は他人と比べない方がいいよ!
自分より年収が高い人は星の数ほどいます。
金融広報中央委委員会によると、貯金が1,000万円以上ある人の割合は、21.3%。(参考:知るぽると 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」)
およそ5人に1人が1,000万円以上の貯金を持っています。
電車の隣に座っているお兄さんは、もしかしたらの1000万円の貯金があるかもしれません。
しかし、その比較には何の意味もありません。
自分の人生の幸福度に他人の貯金額や年収は関係ないよ。
公務員の給料は、安定性が強み。
毎月、安定した額の給料が振り込まれ、年2回ボーナスが支給されます。この強みを最大限に生かせば、必ずお金は貯められます。
「毎月の手取り-2万円」の範囲内で生活できるように支出を見直せば、1年で75万円は貯められます。
他人の給料や貯金額は気にせず、まずは、毎月の支出を見直しから始めましょう。収入が安定しているからこそ、毎月の固定費を見直して支出を減らせば、自然にお金は貯まります。
安定した給料に加えて福利厚生制度も充実しています。
例えば、「付加給付制度」。
付加給付制度ってなに?
どんなに医療費がかかっても自己負担額が、月2.5万円になる制度だよ。
そんな制度があるの!?
医療保険に月1万円も払ってた…
公務員や大手企業には付加給付制度があります。詳しくはこちらで解説しています。
不要な医療保険を見直すだけでも、貯金額は増えます。
他人の給料や貯金額と比べず、公務員の充実した制度について知りましょう。
支出を見直して貯金額が増えれば、これまでより少しだけ気持ちに余裕が出てくるはず。
支出の見直しはすぐにできます。当サイトの情報で、今より少しいい未来になれば幸いです。
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